有形民俗文化財「旧吉田屋酒店」|近代の谷中の人々の生活を知ることができる貴重な展示場

旧吉田屋酒店

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今回は、台東区上野桜木にある「旧吉田屋酒店」をご紹介します。
江戸~明治にかけての商家の建築様式や当時の酒店の様子を知ることができる貴重な展示場です。

江戸時代創業の老舗店「旧吉田屋酒店」

「旧吉田屋酒店」は不忍池の近くにある「下町風俗資料館」の付設展示場なんですが、少し離れているので知らない方も多いかもしれません。
最寄り駅は「根津駅」。言問通り沿いを進んでいくと、約10分ほどで左手に見えてきます。
「下町風俗資料館」からは歩いて20分ほどかかります。
吉田屋酒店
人気の古民家カフェ「カヤバ珈琲」の向かいにあります。
行列ができているので、カヤバ珈琲が目印になるかもしれません。

「吉田屋酒店」はもともと、旧谷中茶屋町の一角にあった江戸時代創業の老舗店でした。
谷中茶屋町とは現在の谷中6丁目です。

今から30数年前の昭和61年まで営業していました。
翌昭和62年に建物が台東区に寄贈され、現在の場所に移築され、不忍池近くにある下町風俗資料館の付設展示場として公開されています。
明治から昭和初期の酒屋店舗の形態を知ることができます。

施設概要
建築面積:108.68平方メートル
延床面積:129.08平方メートル
構造:木造、地上二階
高さ:7.555メートル

江戸から明治にかけての商家の建築様式

建物自体は明治43年に新築されたもので、昭和10年に階段の付け替えや正面入り口のガラス戸の新設など一部改装されていますが、江戸から明治にかけての商家の建築様式を見ることができます。
平成元年には一階部分と二階部分、道具・文書類が台東区指定有形民俗文化財に指定されています。
商家に見られる特徴的な構造が「出桁造り(だしげたづくり)」と「揚戸(あげど)」です。
屋根を見ると、軒が前に張り出しています。
吉田屋酒店
正面の軒下の桁を張り出した構造を「出桁造り」と言い、等間隔で突き出した梁または腕木の上に桁をのせています。
このような立派な軒は商家の格を示していたとも言われているそうです。
また、1階の出桁は二重になっていて、商家特有の長い庇を支えています。
吉田屋酒店-出桁造り
ちなみにカヤバ珈琲も出桁造りです。

出入口には横長の板戸と格子戸上下2枚ずつ柱の溝に沿って、上げ下げして開閉する「揚戸」が設けられています。
吉田屋酒店-揚戸
このような造りは間口を広く使えるので、お客さんの出入りや、酒樽など商品の搬出入に都合が良いそうです。
吉田屋酒店-揚戸
夜間は揚げ戸を閉めて、揚げ戸についている小さい引き戸から出入りしていたそうです。

実際に使われていた道具類が展示してあります

館内には当時吉田屋で使われていた道具や、台東区内外の方から寄贈された関連資料が展示してあります。
吉田屋酒店
こちらは秤。
吉田屋酒店-棹秤
写真左のこも樽や右の陶器の樽、その間にあるのが日本酒を温めるために使う昭和7年の「酒燗器」。
右上は見切れていますが、さお秤です。
吉田屋酒店
左から昭和40年代の呑猪口、吉田屋銘入りの徳利、昭和初期の携帯用湯燗器。
吉田屋酒店
こちらは酒精計量器。
吉田屋酒店-酒精計量器
昭和63年にキリンビール誕生100周年を記念して作られた復刻版。
吉田屋酒店-キリンビール復刻版
左から明治、大正、昭和初期。
明治のパッケージは外国のビールのようでオシャレに感じます。

お酒を入れる徳利やガラス瓶など。
吉田屋酒店-徳利
写真右は明治~昭和戦前まで使われていた「貧乏徳利」。
ネーミングが・・・戦前までは販売元が徳利をお客さんに貸して、それでお酒を購入するのが一般的だったそうです。
徳利にはお店の名前や屋号、所在地などが書き込まれているです。

店内の中央の一段高くなったところには、番頭さんが商品や金銭の出し入れを記録する帳場があります。
吉田屋酒店-帳場
2階へと続く階段。
吉田屋酒店
2階に上がることはできませんが、三畳半と八畳の部屋があり、主に住み込みの店員さんの部屋として使われていたそうです。
立派な柱時計の奥にも部屋が見えます。

階段の下には一斗瓶。
吉田屋酒店-一斗瓶
一斗は10升に相当します。写真だと伝わりづらいですが、実物はかなり大きいです!

砂糖を陳列するスペース。
吉田屋酒店-商品陳列スペース
手前の白双糖(しろざらとう)のケースにだけ、少しお砂糖が入っていました。
粒の大きい、いわゆる白ザラメです。

清酒やビール、製糖会社などのポスターや看板も貼ってあります。
吉田屋酒店-清酒ビールポスター

吉田屋酒店

建物の向かって右側には、明治43年の写真を元に外観のみ復元された倉庫があります。
中には施設の管理人室のような部屋があり、その手前の狭いスペースには、かまぼこ板絵が飾られていました。
吉田屋酒店-かまぼこ板絵
こちらは、寿司店「日の出ずし」のご主人が趣味で描かれたものだそうです。
上野・浅草の下町への愛情が伝わってきます。
「Not for sale」とありますが、買いたいという観光客もいるのでしょうね。
吉田屋酒店-かまぼこ板絵

明治42年1月3日に撮影された吉田屋酒店。
吉田屋酒店
新しく建て直す前の建物です。

こちらは荷物を運ぶのに使われた大八車の車輪。
吉田屋酒店-大八車
明治42年に撮影された写真の右に写っている大八車の車輪でしょうか?!

こちらは昭和8年に撮影されたもの。
吉田屋酒店
もともとあった倉庫が取り払われ、大きな建物が建っています。

外には井戸もありました。
吉田屋酒店-井戸

施設情報

入館料:無料
所在地:東京都台東区上野桜木2-10-6
開館時間:9:30~16:30
休館日:毎週月曜日
(月曜日が祝日の場合、その翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
アクセス:千代田線「根津駅」徒歩10分
東西めぐりん 旧吉田屋酒店1分

まとめ

旧吉田屋酒店は当時の酒屋さんの様子や、谷中に暮らす人々の様子を伝えてくれます。
ぜひ一度、足を運んでみてください。

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2019年11月27日
<参考文献>
下町風俗資料館(最終閲覧日:2019年11月19日)http://www.taitocity.net/zaidan/shitamachi/shitamachi_annex/